総領事挨拶
ご挨拶
在マルセイユ日本国総領事館のホームページをご覧の皆様へ
本年2月に着任のご挨拶をさせていただいてから、1年近くがあっという間に経ってしまいましたが、本年は申年、「見ざる、聞かざる、言わざる」の3猿ではなく、「良く観、良く聞き、堂々と言うべきことは言う!」年にしたいと思いますので、どうぞ今年も宜しくお願い申し上げます。
2015年の世界は、一言で言えば「テロの激化と中国の台頭」。国際社会は自由と平和と民主主義を守る戦いを本格化した年といえる気がします。
欧州では、シリア情勢の悪化に伴う難民の大量流入、パリでのテロ事件の発生、
ISに対する武力攻撃が開始されました。中東地域では、ISの勢力拡大により周辺国の政治的混迷は益々深まって来ています。アジアでは、中国の「一帯一路」(大陸と海のシルクロードを創設)政策実現のため、中国は南シナ海、東シナ海での海洋権益を確保せんとして、米国といわば覇権争いが表面化しています。戦後70年の世界は、既存の戦後体制を変更する動きが至るところで活発化した年と言っても良いかもしれません。
日本では2015年を象徴する字は「安」となりました。「安全」や「安心」と言った願いの気持ちの現れであろうかと思います。この「安」の背景には、日本を取り巻く国際環境の不安定化していること、グロバリゼーションに伴う貧困等の社会問題が顕在化していることに対する「不安」が国民の間に広がっている現実があると思います。
このような状況下で当館の業務も多岐に亘りました。
文化・広報事業については、ニースからトゥルーズに至るまで、伝統文化、ポップカルチャーの紹介事業を幅広く開催・支援しました。加えて特に2015年は、我が国食文化の発信の一環として、「日本酒講習会」「和牛試食会」を開催し、好評を得ました。
領事関係ではジャーマンウィングス機墜落事故が発生し、残念にも邦人2名が亡くなられ、事故現場にて御冥福を祈りました。
また皆様の安全対策につきましては、各主要都市と9つの姉妹都市を訪問して、仏側関係要人との意見交流を通じ、邦人の皆様が安心して生活して頂ける様治安の強化や日仏交流の強化について話し合いを行いました。
経済交流についても、当館で経済セミナーを開催し、直接投資や姉妹都市交流や人物交流の強化、観光促進等様々な方策について、具体的な意見交換会を実施しました。
在マルセイユ総領事館としては、今年も皆様に対する領事サービスや情報提供、広報・文化事業を通じて日仏関係の強化と深化のためにお役に立っていきたいと全館員が考え、実行する所存です。どうかご理解とご支援の程宜しくお願い申し上げます
混迷を深める世界情勢の中で、日本と日本人の振る舞いは次の世代にも大きな影響を与えると思います。その意味で、新渡戸稲造氏が、武士道の5要件として、1.武士は強く(内面外面とも)あるべし、2.武士は先に剣を抜いてはならぬ、3.武士は弱きを助けるべし、4.武士は為したことを恩に着せてはならない、5.武士は為した後黙して立ち去り、そして立ち去った後は華の香が残る、と述べていることは、私たちが今「武士」の代わりに「日本人」若しくは「日本」と読み替えて見ても良いのではないでしょうか。
和を尊びつつ、弱きにつく強い日本・日本人!。平成の時代の「坂の上の雲」を目指すときが到来しつつあるのかもしれません。
2016年1月
在マルセイユ総領事
池﨑 保