2015年の主な出来事
1月
5日:2014年12月、マルセイユのボーメット監獄で、受刑者が多額の札びら、携帯電話、果てはマリファナに至る禁制品を誇示するなどの画像をウェブ・サイト上に数週間に亘って投稿し、これでは「刑務施設」ではなく「休暇村」だと物議を醸した。組合は、「刑務官1人当たり170人の受刑者」では十分な取り締まりは不可能と現状を告発。
12日:マルセイユ大海運港(GPMM)2014年実績 取扱量7845万トン:前年比2%減。原油取扱量の減少に負うところ大。反対に諸商品は3%増、コンテナも7%増。巡航客船利用者130万人、定期航路旅客は115万人、内コルシカ便は30%減。
12日:マルセイユの高校で女子生徒(17歳、マグレブ系)がバスケット試合中、ボールを回さなかった男子生徒(16歳、アルメニア系)を恨み下校時に従兄弟2人に襲わせて殺害した。全仏アルメニア組織調整委員会では、「地域社会間の平穏を脅かす事態」と深刻に受け止め、警告を発した。
15日:2014年、アルプ=マリティム県在のユダヤ系仏人3万人中132人がイスラエルに移住した。ヴァール県では8000人中13人、ブーシュ=デュ=ローヌ県では495人(仏全体では7000人で世界第1位。前年に比べ倍増)と各地で増加。近年ユダヤ人を狙った数々のテロ行為に見られるように、フランスがユダヤ人地域社会の安寧を保障できていない現状を反映。但し2割方は、定住ならずフランスに戻っており、容易な選択ではないことを物語っている。
15日:スイス国立銀行による為替介入の廃止によってスイス・フランが暴騰し、フランスの地方自治体が同通貨建てでDexia銀行から受けていた融資が「不良化」する事態になった。管内では2000年代、カンヌ、ニース、ヴァロリスを初めとする多数の自治体が銀行の融資に魅了されたが、スイス・フランの高騰によって、受けた融資額に対する利子が20%乃至30%増加する可能性もあって深刻な問題になりつつある。
19日:地方空港2014年実績 1位ニース(1166万人、前年比1%増)、2位リヨン(845万人、1.1%減)、3位マルセイユ(818万人、1.9%減)、4位トゥールーズ(750万人、0.9%減)
26日:2014年プロヴァンス・アルプ・コート=ダジュール(PACA)州失業率:11.6%(317,145人で前年比6%増。全仏3,496,400人、9.9%)
治安関連
7日:パリの風刺週刊紙「シャーリー・エブド」社襲撃事件を受けて管内各地でも哀悼と抗議の意思を表明する集会が自然発生し、市民が参加した(リヨン1.3万人、トゥールーズ1万人、マルセイユ7000人、グルノーブル5000人、クレルモン・フェラン3000人、全仏で10万人が参加)。
9日:アルビ近郊(タルヌ県)、エクス・レ・バン(サヴォア県)でモスクが放火、コルテ(オート・コルス県)ではイスラム礼拝所に豚の頭がぶら下げられるなど各地で犯罪や嫌がらせが相次いだ。
11日:全仏約400万人が追悼集会に参加。管内ではリヨン30万、グルノーブル11万、マルセイユ6万、クレルモン・フェラン5万、モンペリエ4.7万、トゥーロン4.5万、ペルピニャン及びエクサン・プロヴァンス4万、アヴィニヨン1.9万、アジャクシオ、ディーニュ・レ・バン及びアルルは1万人。FNが集会を開いたボーケール市(ガール県)は800人を集め、共和主義擁護というよりル ペン支援集会の様相を呈した。
12日:全国で警備が強化され、マルセイユでもユダヤ人学校、礼拝堂等に外国人部隊兵士(200人)が配備されるなど総計840人まで増員。
{24日:全仏対イスラム恐怖症観測所(ONCI)によると、シャーリー・ヘブド襲撃事件後約2週間(1月7-20日)に、反イスラム行為が128件と急増した(パリ一帯を除く。一方、パリ一帯も含んだ2013年の年間発生件数は133であった。)}
27日:リュネル(エロー県)でジハディストの検挙が行われ、5名(26歳から44歳)が拘束された。人口2.6万人のリュネル(失業率20%、麻薬売買も盛んであることから治安優先地域(ZSP)に指定されている)からは、シリアやイラクに向けて既に約20名が出発し、内6名(18歳から30歳)が2014年10月以降死亡した。ジハディストの中にはモスクに通い詰めた者もいるが大半はネット・サイトで勧誘された模様。 フランスにおけるイスラムは、カトリックのように統一された組織を持たず、宗教指導者を正式に養成する機関もなく、フランスの共和政体や政教分離原則(laicite)を理解・尊重することのない外国人イマムに頼るモスクさえある。加えてイスラムを語る過激派によるネット・サイトを通しての宣伝があり、教理を知らない若者が原理主義に惹かれやすい状況にあるといわれる。
27日:ユダヤ組織代表者会議(Crif)は、2014年、反ユダヤ行為が倍増(851件、101%増。13年は423件)した旨公表。うち暴力行為は2.3倍(130%増)となった。都市別では、1位パリ(154件)、2位マルセイユ(36件)、3位リヨン(30件)、4位トゥールーズ(27件)、6位ニース及びヴィラーバン(ローヌ県)(共に17件)。(パリを除き全て管内の都市)
28日:(シャーリー・エブド社襲撃事件の後)「テロリストの味方」と名乗ったニース在の8歳の男子児童を学校が訴え、警察が「テロ行為称賛」容疑で聴取し物議を醸した。小学校3年生の児童は、事件の翌日学校で催された黙祷と校庭での「連帯の輪」に参加することを拒んだ。その直前にも「フランス人は殺さないとだめ。僕はテロリストの味方。イスラム教徒のしたことはいいこと。(シャーリー・エブドの)ジャーナリストは死んで当たり前。」と大声で叫び教師を驚かせた。本件が刑事罰の対象となるか否かはニース検事局の判断に委ねられている。
24日:コルシカでの2014年テロ件数12件(2013年32件)と過去30年で最低。報復事件も14件(同21件)と減少した。
28日:パリ控訴院は、クルド系トルコ人10人を、クルド労働者党(PKK 。トルコ、EU、米国はテロ組織とみなしている)の資金集めに加担した罪で1年から4年の有罪、マルセイユの「クルド人民の家」には罰金5万ユーロと解散命令を宣告した。
2月
3日:ボーケール市長(FN。ガール県)が小学校の給食費未払い家庭を「不当利得者」と呼んで、密告を奨励する手紙を同市児童の親全員に発送し、論議を呼んだ。市長の狙いは、「不払い」を「子の放棄」と見なし、児童保護局及び家族手当公庫に通告しその後検事局の知るところとするというもの。
13日:フランス・イスラム民主主義党(UDMF、2012年11月設立)が、県議会選挙にマルセイユ、ニース、リヨン郊外から出馬する旨表明。政治の現状に満たされていないアラブ・イスラム系市民を対象に活動(党員900人、支持者8000人)。アラブ系に対し排外主義的な右派も、アラブ人有権者の票目当ての左派も排して、地方選挙では外国人に投票権を与え、トルコのEU加盟を認め、学校でのヴェール禁止を無効とする意向。
20日:国民議会は、2018年1月1日を以てコルシカの領土自治体及び2県を統合するコルシカ改革法案(共和国国土新組織化法案、NOTRe)を採択した。
22日:エアバス防衛・宇宙部門は、大韓航空と共同で、韓国の次期空軍戦闘機(KF-X)開発に当たっての基本合意に達した旨発表した。KF-Xは、F-16戦闘機に相当し、現役のF-4及びF-5戦闘機の代替機となる。総額67億ユーロ、140機製造の予定。
25日:ラ・シオタ及びジェムノスにあるジェマルト社(Gemalto、仏蘭系、SIMカード製造で世界1位)のコンピューター情報網に、2010年及び11年、英政府通信本部(GCHQ)及び米国家安全保障局(NSA) が、暗号解読・SIMカード制御を目的として侵入したとエドワード・スノーデンがウェブ・サイト上で明かした。 その後、上記2組織は盗んだ情報を基にして自国治安維持のために携帯電話を盗聴していた模様。ジェマルト社は、当該時期に極めて高度なサイバー攻撃2件のあったことを認めた。
治安関連
3日:ニースでユダヤ地域社会センター(礼拝堂、ラジオ局、ユダヤ人学校)を特別警戒中の兵士3人に刃物を持った男が襲いかかり、2人を負傷させた。犯人(ムッサ・クリバリ、30歳)はその場で逮捕された。その後の調べで、男は、イスラム過激派の言辞を弄する人物であったこと、1月末にシリアでのジハードを目指してトルコに発った際、事前通報を受けたトルコ当局の入国拒否により即フランスに戻され、治安当局の聴取を受けていたことが判明した。本人はフランス、警察、兵士、ユダヤ人を憎悪すると語る一方で、イスラム信者が世界中で迫害されていると主張した。
8日:トゥールーズ及びアルビでジハード網に属すると思われるチェチェン出身の6名(全員男性、32-38歳)が「テロ活動に関係する犯罪者集団及びテロ活動への資金供給」容疑で拘束され、その後予審開始が決定した。4名は政治亡命者として仏当局に認められていた。シリアへの渡航経験者もいると見られている。
9日:ヴァルス首相がマルセイユを訪れた当日朝、マルセイユ市のカルティエ・ノール(北地区)にあるシテ(集合住宅区域)で警察車両に向けてカラシニコフを用いた乱射があった。犯人は7-8名とみられ、内2人が後日パリ近郊(セーヌ・サンドニ)で拘束された。捜査によると、既存の密売網を奪うため蜂起を図ったもので、初め対立集団との間に銃撃戦があり、その後、通報を受けて到着した警察車両に乱射が行われた模様。
23日:カズナーヴ内相は、シリアに渡航しようとした6名(ローヌ・アルプ及びプロヴァンス出身の23-28歳男女)から旅券を取り上げた旨発表。2014年11月に採択されたテロ対策法の初適用例。
25日:ヴォヴェール(ガール県)在の男性(29歳)宅を憲兵が尋ね、本人にフランス出国禁止を命じ、身分証明書及び旅券を押収した。男は、強盗を犯して服役中(2005-2009年)、イスラム信仰を急進化させ、出所後はイスラムを学び深めるためと称してシリア、エジプト、オーマン、アラブ首長国連邦及びトルコを訪れていた。今回もシリア行きを企図していた模様。当局ではジハード網との関連を捜査中。
3月
4日:アレヴァ社(核燃料製造・使用済み核燃料処理、原子炉プラント建設)は、2014年損失決算を公表した。低効率ウラニウム鉱山の購入、EPR建設遅延・工費膨張、福島原発事故による市場の冷え込み等が原因となって赤字は48億ユーロに及ぶ。これに伴い、経営陣は人員整理を主軸に節減計画(2017年までに10億ユーロ)を立てつつあるが、労組では大規模な解雇につながることを警戒し、同社従業員を抱える管内の自治体(マルクール630人、トリカスタン500人、ピエールラット、ナルボンヌ各300人等)も地域経済に及ぼす悪影響(従業員以外に下請けや派遣社員も関連)を心配している。
6日:シヴェンス・ダム建設に関し、タルヌ県議会は、当初規模の2分の1に縮小した建設案並びに現場を占拠していた建設反対派の即刻退去を採択した。現場では、ダム建設を巡り、建設推進農民派と建設反対派とが官憲を交えて対峙しており、数週間来緊張が高まっていた。
8日:内務省によると、ミディ・ピレネ州は、欧州で第3番目に諜報活動の活発な地域。特にエアバス、タレス(Thales)、アストリアム(Astrium)と言った高付加価値の航空・宇宙・防衛産業が集中するトゥールーズ並びにその周辺地域では、米、中、露、西等が情報機器にハッカー攻撃を仕掛ける他、上記会社に出入りする企業訓練生や情報関連企業を使って情報収集活動に努めている。
{10日:国民議会は、国土新組織法(NOTRe)を採択した。自治体の連合及び州の権限強化、県の権能低下、コルシカの単一自治体化を規定。}
16日:エアバス・ヘリコプターは、韓国との間にH155型機300機(軍用機200、民生機100)の韓国での製造・点検維持契約を結んだ(総額約30億ドル)。米国製機種が永年に亘って市場を占有していた中にあって画期的と自ら評価。
17日:フランス・イスラム民主主義党(UDMF、2012年11月設立)は、同党にとって仏唯一の県議選対象地であったマルセイユで、出馬取り消しを表明した。同党は、ニース、リヨン郊外等からも出馬の旨表明していたが、強く不穏な外圧がかかったためすべてを中止した。イスラム候補が受け入れられるにはまだ時間を要すると見ている。
22、29日:県議会議員選挙が実施された。
24日:メオラン・ルヴェレ(アルプ・ド・オート・プロヴァンス県)郊外の山岳地帯にバルセロナ発デュッセルドルフ行のジャーマンウイングス航空機(エアバスA320型機)が墜落。乗客144人(内邦人2名)と乗員6人が死亡した。
治安関連
1日:ジハードに参加する目的でシリアやイラク行きをするものが出る一方で、キリスト教徒同胞を護るため同地域に向かう者も数ヶ月前から観測されている。彼らは、現地でキリスト教自警団に所属し、銃器取り扱いの訓練を経てジハディストと対峙する。
10日:「イスラム国」は、イスラエル諜報機関のために活動したとの理由でアラブ系イスラエル人を処刑する動画をネット上に載せた。処刑に当たったと見られるのは少年で、その後トゥールーズの小学5年生(12歳)であることが同級生によって確認された。映像には、去る1月パリで発生したユダヤ食品店襲撃事件に触れ、イスラエル人を襲ってエルサレムを征服するとフランス語で脅す男が登場。捜査当局では2人はモハメッド・メラの義兄弟サブリ・エスィッドとその義理の息子ではないかと調査中。(モハメッド・メラは、2012年3月、トゥールーズでユダヤ人学校を襲い、児童他4名、他所で兵士3名を殺害した自称アル・カーイダ。他方、サブリ・エスィッドはトゥールーズではイスラム急進派で知られる。)
24日:トゥールーズでヒジャブを纏ったイスラム女性が学校に子供を送りにいった際、すれ違った男が「俺たちのところではこれはだめだ」と女性の髪を掴んで地面に引き倒し、平手打ちの上幾度も殴った。連れの男が女性の妊娠に気づいて暴力をやめさせた。
4月
7日:バスチア行政裁判所は、コルシカ・フェリー社からの訴え(2013年11月)を受けて、SNCM-CMN社に与えられた本土-コルシカ間海上輸送についての委託契約(公共サーヴィス委託の名の下、年間9600万ユーロを後者に授与。2014年1月発効)が公正な競争を阻害すると判断し、2016年10月を以て取り消す旨判決を下した。右判決によって、SNCMの経営は一層困難になると予想される。
10日:ヴァロン=ポン=ダルク(ローヌ=アルプ州アルデッシュ県)に発見されたショヴェ洞窟脇に複製博物館が開館した(オランド大統領出席)。右洞窟は1994年に発見され、3.6万年前(旧石器時代)に描かれたライオン、馬、サイ、手形等約400点(ユネスコ世界遺産)を蔵しているが、保存のため研究者のみに入洞を認め、鍾乳洞を含めた周辺環境を忠実に再現した博物館が完成したもの。
14日:ジャン=マリー・ルペン(FN名誉総裁)は自らの起こした舌禍事件*によって次回州選挙のプロヴァンス・アルプ・コートダジュール(PACA)筆頭候補を孫のマリオン・マレシャル=ル ペン(国民議会議員)に譲った。17日、FNは、マリオンを筆頭候補に決定。 (*当館注:3月ラジオ会見で「ガス室は第2次大戦史の細事」との(1987年の)自らの発言に、「悔いはない。考えも変わらず」と応え、極右誌上で「ヴァルス(首相)はフランス人になって30年、自分は1000年以上。ヴァルスは本当にフランスに愛着があるか。」等と誹謗中傷した。)
16日:トタル社は、ラ・メド(ブーシュ・デュ・ローヌ県)にある同社石油精製施設を2016年末までにバイオ燃料精製施設に転換する旨発表した。これによって従業員430人中178人が雇用縮減の対象となる。石油業界は、原油価格の低下に加え、生産能力が需要を上回る状態が続き、トタルも同様。労組は、対決の構え。
20日:ブーシュ・デュ・ローヌ県議会は、このほど児童用健康手帳を作成したが、性差を正当化し、偏見を助長するとして廃棄を決定。これにより製作費3万ユーロが無駄に。(男児が頭上に手をかざして早く大きくなりたいとの夢を表わす後方で、女児は、腰周りに当てた巻尺を困惑した表情で見るといった節食を促すような内容になっている)
24日:アルメニア人「虐殺」100周年記念集会がマルセイユ他で催された。(同国首都エレヴァンでの式典にはオランド大統領が出席)
治安関連
2日:モンテリマール(ドローム県)のモスクを爆破しようとしていた高校生4人(16-17歳)が「犯罪集団」容疑で検束された。家宅捜索でモンテリマール市内地図、役割分担を添えた犯行計画書、武器の他化学薬品押収。少年らは、インターネットで爆破物製造方法を検索していた。供述によると、イスラム教徒に対する犯行を思いついたのは数ヶ月前であったが、当時宗教過激派の台頭に彩られた国際的な混迷状況の中、1月のシャーリー・エブド襲撃事件が計画を早めることになったのではと見られている。4人のうち2人が憎悪を含む文言を用いており、牽引役を担っていた模様。犯行計画には要求事項がなく、過激派集団に属した形跡も無い。
5月
5月全体を通してFNの内紛が続いた。4月のルペン父による舌禍事件に続いて、パリのジャンヌ・ダルク祭でまたもやジャン=マリー(党名誉総裁)が娘マリーヌ(党総裁)を出し抜き登壇、歓呼に答え(1日)、FNは党規に反した行動をとったとして党員資格を保留した(4日)。煽りを食ってマリオン・マレシャル=ルペンは、一旦公表したPACA州議会選挙筆頭候補を辞退。その後再び出馬を声明した(26日)が、事態は収拾していない。
1日:マルセイユ-ロンドン間にTGV(ユーロスター)便が開通。以後、両都市は7時間30分で結ばれマルセイユを訪れる英国人は年間40万人に倍増すると予想される。マルセイユでは商店関係者が英語対応に奮闘。市内高級ホテルでも英国人客倍増を期待(2014年宿泊客の8%が英国人)。
4日:ベズィエ(ラングドック・ルシヨン州)市長ロベール・メナール(親FN)が同市の公立小学校に通うイスラム児童数を調べさせたことが発覚し物議を醸した。テレビ番組中、市長が「ベズィエの市立小学校児童の64.6%はイスラム教」と発言。検事局は、「民族的出自に基づく資料の不法所持」容疑で予審を開始した(最高で禁固5年、罰金30万ユーロが科せられる)。
7日:ペルピニャン(ピレネー・オリオンタル県)の重罪裁判所で女性の市民陪審員が宣誓に当たって、ヴェールを取ることを拒み、罰金(1000ユーロ)を科された。審理中は再び身につけることを許された類のヴェールであった。
9日:エアバス防衛・宇宙社の軍用機A400Mが南スペインで墜落、社員4人が死亡、2人が負傷した。トルコ空軍に納入を控えての認証試験飛行中に生じた事故であった。(事故に伴い同機保有国はすべて飛行を留保。仏のみ最優先事項に使用を続ける旨表明。) 2003年、欧州諸国が製造計画に合意して以来、 発注国の要求が多様なこともあって同機の開発は複雑を極め、技術・財政及び政治上の問題に悩まされ続けた。第1号機は4年遅れで就役、開発予算も当初の200億ユーロから280億ユーロに膨張。 現在、欧州7カ国が174機を発注しているが、欧州外では既に注文を取り消した諸国もあり、今回事故による悪影響が一層懸念されている。事故後、エアバスは、全顧客に対し、エンジン関連部の飛行前点検他を要請した。 同社責任者は、ブラック・ボックスの分析の結果、事故原因が最終組み立て時のエンジン制御プログラムの設定不備から生じたエンジン停止と見られる旨説明。
16日:ヴァルス首相は、内相とともにイタリア国境沿いのマントンを訪ねた。同地ではアフリカの角(ソマリ半島)における戦火を逃れた非合法移民の流入が後を絶たず、欧州連合として抜本的取り組みが必須と叫ばれている。
29日:ヴァルス首相は、「エクス・マルセイユ・プロヴァンス都市圏(MAMP)」構想の新段階を築くためマルセイユを9閣僚とともに訪れ、「都市圏」を構成することになる6自治体共同体議長を初めとする地元議員を前に、国として責任を果たす旨(特に予算配備)約束するとともに、地元の議長・議員が構想実現に向けて積極的に協力するよう要求した。
29日:マルセイユ警察は、ブルガリア警察との捜査協力の結果、市内繁華街で子供、老人及び障害者に物乞いをさせていたブルガリア人夫婦を検挙した。夫婦は、夫の弟や息子などと共謀して本国から数十人をフランスに運び(中には「買われた」者も)、市内繁華街に7時から19時まで貼り付けては物乞いさせ、寝場所(市内にあるロマ人キャンプ)と引き換えに稼ぎ(一人当たり日に50-80ユーロ)の半分を「天引き」した疑い。不満は脅しや暴力で抑えつけていた。一味はマルセイユの他にもギリシャ、ドイツ、スイス及びイタリアで数年来同様の稼業を営んでおり、稼ぎは約4万ユーロに上るとみられる。
治安関連
8日:トゥールーズ及びポルテ・スュール・ガロンヌに住む2家族(父親と子供2人)が各々キャンピングカーを借りて(4月23日)シリアに入国した模様。両家族とも、成員の一部が全国治安総局(DGSI)の監視下に置かれていた。5月2日に戻されるはずの車両が返却されず、自宅は空となっていた。両家族は最高級の同一車種を借りており、ともに、イタリア、ギリシャを経てトルコに向かう旨行路を記載していた。
22日:イラクのアンバール地方で軍基地に自爆テロのトラック2台が突っ込み、数10人が死亡した(ジハディスト筋情報)。そのうち1台を運転していたのは、トゥールーズ出身の25歳の若者(ケヴィン・シャサンという名からキリスト教徒の子弟で後イスラムに改宗した者と解される)であった。また同人は、1時期60人からのジハディストを指示する立場にもあり、フランス人ジハディストが戦闘で死亡するたびに家族に連絡していた人物と解される。右自爆テロに続けて、アブー・アブデラズィズと名乗る男が2度目の爆発を引き起こしたが、これもトゥールーズから来た人物と見られる。同市出身であるかは不明。
6月
4-5日:マルセイユでオランド大統領出席の下、「気候変動に関する地中海会議(MedCop21)」が開催。
8-12日:山田啓二京都府知事一行がモンペリエ市及びセット市を訪問。ラングドック・ルシヨン州(ダミアン・アラリ議長)と友好提携協定(高等教育、研究、教育、経済)を結んだ。
11-15日:伊仏国境のヴァンティミリアでフランス官憲が英語圏アフリカ(エリトリア、スーダン等)から来た不法移民をイタリアへと押し返し、移民も現場に残って仏入国の機会を探るなど、膠着状態が続いている。仏右翼組織は、「欧州はお前たちの家ではない」と大書した垂れ幕を掲げるなどして、伊官憲に立ち退きを命ぜられた。アルプ・マリティム県では、先週1439人の不法移民が検問の末、伊国境に戻された。イタリア側では1000名以上を数えたが、国内に不法入国者が増え続ける現状を憂い、首相も、「欧州が抜本策を講じないなら考えがある」と通行証の発行を匂わせる発言をした。
13日:カンヌ市は、公道監視員を設け、公共空間からタバコの吸殻や空き缶などを追放することに目覚しい成果を上げた。監視員は私服で街中を見張り、違反者を見つけると一定距離を置いてつけて来た警察官に報せて、身分証の提示を求めさせ(監視員には身分証請求権がない)、罰金(68ユーロ。期限内に払わぬ場合は180ユーロに)を求める仕組み。犬の糞、夜間の騒ぎ立て、車輌騒音、唾棄行為、大型ゴミ投棄などにも目を光らせる。違反切符の数は、20倍以上に増え(2013年度の11件から2014年度は225件に)、市清掃員も路上ゴミの減少に驚くほど。公衆道徳の欠如に悩むパリでも類似の試みが始まる予定。
16日:コルシカのプリュネリ=ディ=フィウモルブ(オート=コルス県)の小学校の祭りで「イマジン」(ジョン・レノン作)を児童が仏語、コルシカ語、英語、スペイン語及びアラビア語で歌うことになっていたところ、一部の父母がアラビア語歌唱に反対し、学校は混乱を避けるため祭りを中止した。(同島における反アラブ感情の根強さを伝える事件として全国紙も報道。)
25-29日:マルセイユに海上保安庁練習船「こじま」が寄港した。(海上保安大学校による平成27年度遠洋実習航海の一環)
治安関連
26日:サン=カンタン=ファラヴィエ(イゼール県)のエア・プロダクト社(工業用ガス製造の米企業)に業務を装って来た運送会社従業員(ヤッサン・サリ、35歳)が車で倉庫に激突しガス爆発を引き起こした。犯人が更なる爆発を企てていたが、現場に駆けつけた消防士がこれを捕らえた。敷地内の鉄柵にはイスラム主義の旗を挟んで切り落とされた運送会社営業部長(50歳男性)の首が吊り下げられていた。犯人はセラフィスト系の活動家と見られている。
7月
1日:マルセイユを李克強中国首相が訪問した。パリではエアバスA330型機75機の発注契約(180億ドル)を締結。トゥールーズでも、中国におけるA330型機操縦室組み立て工程の設置契約を締結した。
9日:欧州裁判所は、フランス政府がコルシカ地中海海運会社(SNCM)社に支払った2.2億ユーロに及ぶ不正補助金の回収義務を怠ったとするコミュニケを発表した。
10日:父娘間の確執に端を発したFNの内紛を反映して、PACA州でも分裂が深刻化しつつあり、ジャン=マリー・ルペンは、孫のマリオン・マレシャル=ルペンに与えた言質を翻して州議会選挙に出馬する可能性を仄めかしている。{2日、ナンテールの大審裁判所は、ルペン父の不服申し立てに基づき、同人を党名誉総裁職から罷免するため、名誉総裁職そのものの廃止を定めるに至った手続きに瑕疵があったとして、党決定を反故にする判定を下した。}
10日:エアバス・グループ社製の電動飛行機(E-Fan)がドーヴァー海峡の完全自立横断飛行に成功。所要時間36分。
15日:マルセイユをメキシコのペニャ・ニエト大統領が訪問した。
24日:畜産農家への公的支援を訴える行動が7月各地で相次いだ。オート=ガロンヌ県では複数箇所で、乳牛酪農家200人が高速道路の料金所を無料化、羊や豚を連れてのスーパーへの入店、外国運送業者の積荷取り締まり等を行った。
24日:ルヴェルネ(アルプ・ド・オート・プロヴァンス県)でジャーマンウィングス社航空機墜落事故(3月24日発生)犠牲者への献花と追悼式が行われた。
27日:トータヴァル(ピレネー=オリオンタル県)で55万年前の人類の歯が発掘された。従来フランスにおける最古の人類とみなされてきた頭骨(1971年同地で発掘)より更に10万年存在をさかのぼることになる発見となった。
治安関連
3-6日:ミラマス(ブーシュ・デュ・ローヌ県)の軍弾薬庫から雷管180個、プラスチック爆弾約10個、手榴弾約40個が盗まれた。犯行日時不定。
13日:ポー=ヴァンドル(ピレネ=オリオンタル県)の軍基地(ル・フォー・ベアー)を襲撃し、将校の斬首殺害を計画していた男3人組(23、19、17歳)が逮捕された。同基地に勤務していた元海軍兵士(23歳。2014年軍務不適格で免役に)が主犯と見られるが、背後にはロンドン在のジハーディストもいる模様。
15日:ベール・レタン市(ブーシュ・デュ・ローヌ県)の石油化学コンビナートにあるリヨンデルバーゼル社で深夜、石油タンク2基が続けて爆破され炎上した。高さ200mに及んだ火炎は、30km以上離れたマルセイユからも認められた。8時間後鎮火。負傷者無し。3基目タンクから発火装置の仕掛けられているのが発見されており、計画的犯行と見られる。
8月
1日:7月コルシカで検出されたオリーヴを襲うバクテリア(Xylella fastidiosa)の被害がプロヴァンスを中心とする南仏一帯に及ぶ恐れがあることから、各地で検査が実施された。
3日:アルプ=ド=オート=プロヴァンス県とアルプ=マリティム県に跨るメルカントゥール自然公園では、チェルノブィリ原子力発電所事故後29年を経てなお高濃度の放射能が検出されている(セシウム137の蓄積によると見られ、通常値の100倍(10万Bq/kg)に達する所も)。
14日:ラット(エロー県)で福島の児童4名(11-12歳)がフランス保養プラグラムで滞在した。東日本大震災以降続く日仏両国の協会による企画。
17日:エアバスは、インディゴ航空(インドの格安航空会社)との間に、A320NEO型機250機(265億ドル)の売買契約を結んだ。エアバスにとっては受注機数で最大、受注額では第2位となる大型契約。
20日:国民戦線(FN)党執行部は、度重なる舌禍事件を引き起こしたジャン=マリー・ルペン名誉総裁に対し、除名処分を下した(同人は、去る4月、ガス室を第2次大戦の「細事」と形容した自らのかつての言辞を肯定する等の事件を惹き起こした)。ルペン父は、PACA州議会選挙にふれて、FN公認候補である自らの孫(マリオン・マレシャル=ルペン)に対抗して出馬する意向はないと述べたものの、状況が今後どのように展開するかは定かではない。なおルペン父は、除名処分の合法性について司法判断を仰ぐ旨表明。
治安関連
4日:内務治安総局(DGSI)は、カルパントラ(ヴォクリューズ県)在住のジハーディストと見られる男性(21歳)を検挙し取調べ中。中東に赴いてジハード集団に名を連ねた後フランスに帰国したと見られている。
23日:オーシュ(ミディ・ピレネ州ジェルス県)にあるモスクで火災が発生し、建物の4分の3を焼失した。負傷者なし。犯人は、火回りを早めるため石油可燃物を屋根に撒いた上で放火したと見られる。
9月
10日:エアバス・ヘリコプターは、中国のCredit-Bail CMIFL社とエキュロイユ型ヘリコプター100機の購入につき合意した(納入2016−20年)。エアバスによると、中国と香港は2020年までに最大の顧客となり、今後30年に5万機を購入するとみられている。
10日:リヨン控訴院は、モンサント社製(多国籍化学薬品企業。本社米)除草剤の蒸気を誤って吸気した農民(障害度50%と認定)の訴えに基づき、第1審に続いて企業責任を認める画期的判決を下した。同社では破棄院に上訴の意向。
14日:欧州への難民の大量到着が続く中、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール州は、支援を表明した自治体及び非営利団体に宛てて300万ユーロを拠出する旨決定した。並行して自治体次元でも、難民受け入れについて「支援」、「条件付支援」、「検討中」、「拒否」などの声が上がった。
16日:海洋生物が最近の40年間で半減したとWWFが報告。漁獲過多、汚染、気候温暖化(海水の酸化や温度上昇)が原因。地中海でも年間150万トンが獲られ、資源量の89%が疲弊状態にあると指摘。
20日:マルセイユで行われたサッカーのマルセイユ(OM)-リヨン(OL)の対戦中、OLに移籍した元OM選手に対し、一部観衆が罵倒や脅迫の言辞を浴びせ、ガラス瓶や発煙筒を投げたため、試合は一時中断された。サッカー「UEFA欧州選手権2016」開催を9ヵ月後に控え事態を重視したオランド大統領は、責任者に対する厳格な制裁を望んだ。
{22日:フランスでモスク前に豚の頭を放置する嫌がらせが1月以来現在まで14件を数えている。最近のものとしては、コルシカのイル=ルースで猪の頭がモスク前に置かれ、イスラム教徒の心情を大いに傷つけた。ところが刑法上で罰則規定を定めた「冒瀆」、「墓所陵辱」、「人種差別扇動」、「信仰所破壊」等のいずれにも該当しない。よって公判においても被告を処罰することが困難な状況にあるが、これは精神的被害を受けたイスラム信者らを救済する社会的機能が欠けていることを意味している。}
26日:政府は、ボルドー-トゥールーズ間の高速鉄道幹線(LGV)建設を承認した。公共調査委員会の出した否定的見解にも拘わらず。2024年完成の暁にはトゥールーズ-パリ間は3時間10分、トゥールーズ-ボルドー間は1時間5分で結ばれる予定。
29日:マルセイユで同性愛者の婚姻に市代表として立ち会った議員が婚姻証明を拒否した(2014年8月)ことに対し、マルセイユ軽罪裁判所は、当該議員に禁固5ヶ月(執行猶予付き)と慰謝料の支払いを命じた(被害者2名に1200ユーロ、私訴当事者(partie civile)2団体に150ユーロ)。被告は控訴せず。
治安関連
11日:トゥールーズにテロ対策専門検察官が配属される予定(時期未定)。ミディ=ピレネ州、オート=ガロンヌ県とりわけトゥールーズにおけるイスラム過激派の活発な動きに応じての措置で、テロ活動の予防ならびに取締りの向上が期待される。
10月
3日:カンヌ市をはじめとするアルプ・マリチム県及びヴァール県を襲った集中豪雨(死亡20名、行方不明2名。一部道路や鉄道は不通。航空便も欠航)を受けてオランド大統領他が現地を見舞った。豪雨の局地性及びその例外的な激しさもさることながら、降雨災害に十分な注意を払わず、沼地や川を埋め立てて都市開発をしてきた地方行政の不備が指摘された。車を避難させようとした住人が建物の地下駐車場で複数溺死するなど、豪雨は災害に備えのない都市及びその住民に猛威を振るった。
3日:国際熱核融合実験炉(ITER)進捗状況。契約の90%が署名済み。機械の建設・製造として70億ユーロ分が契約済み。そのうち仏企業担当分は22億ユーロ。更にPACA州の企業担当分は16億ユーロ。 日々2000人以上がITER関連で就労。内1000人は建設に従事(400人現場、600人エンジニア棟勤務)。ITER機構では640人を雇用。更にほぼ同数が下請け、専門家、コンサルタントとして雇用されている。 サイトでは企業288社が就業しており、仏企業が84%を占める(アルプ=ド=オート・プロヴァンス県43社、ヴォークリューズ県26社、ブーシュ=デュ=ローヌ県150社)。韓、独、西の企業もエクスやマノスクに進出し、400人の地元雇用を創出。 ITERにとって最大の障害は建設遅延。「2025年までに完工に至らぬ場合、工費の膨張により計画実現が不可能となる」可能性も(2007年時点50億ユーロと見積もられた工費は、2013年には160億ユーロに膨張。)。ビゴー現機構長は、決定過程の簡素化・迅速化を主張。
16日:リヴサルト(ラングドック=ルシオン州ピレネー=オリオンタル県)収容所記念館が開館した(ヴァルス首相出席)。スペイン共和主義者数万人、ユダヤ人5000人、ツィガン、ハルキ2万人等、各時代における「望まれざる者達」を収容した施設(面積640ha及び活動期間1941-2007年において欧州最大)。開館にいたるまでには、ヴィシー政権時代に収容されたユダヤ人関連書類がゴミ捨て場に廃棄されているのが発見され、これを報じた記者が誤って非難を受けるなど紆余曲折を経た。
20日:モアラン(ローヌ・アルプ州イゼール県)で「旅する人々」が高速道路を閉鎖し、料理店を破壊し、車(35台)に放火して鉄道(リヨン-グルノーブル線の計125便)を妨害した。直前の週末に空き巣を働き盗難車で逃走中、事故を起こして死亡した弟の葬式に立ち会うため、刑務所で服役中の兄が仮出所を申請したが同房者を負傷させた廉で認められなかったことに抗議して。 (当館注:「旅する人々」とは、仏の法律用語としては、職業柄特定の住所を持たず、各地を渡り歩く人々のこと。日常語としては、ロマを指す場合が多い。) 但し今回、事件に関連したのはモアランに数年来定住していた者達。犯行に加わった者には、覆面手袋が多く、犯人特定は時間を要すると検事表明。
21日:経営危機の渦中にあるアレヴァ社(原子力産業複合企業)は、フランスで2700人の従業員削減を図っているが、マルクール(ラングドック=ルシヨン州ガール県)で319人、トリカスタン(ローヌ=アルプ州ドローム県)で559人縮小予定であることを労組(CGT)が公表した。
29日:エアバスは、中国からA320型機100機(97億ドル)を受注した。30日、エアバス・ヘリコプター社は、中国との間にH135型機100機(7.5億ユーロ)の仮契約を結んだ。
11月
9日:エクス=マルセイユ=プロヴァンス大都市圏議会の初代議長にジャン=クロード・ゴーダン(マルセイユ市長、上院副議長、LR)が選出された。マルセイユ主導の大都市圏に反対する自治体首長は右議長選出に異議を唱え、司法判断を仰ぐ構え。
20日:マルセイユ商業裁判所は、裁判上の更生下におかれていたSNCM社の買取先として候補企業4社からロッカ・グループを指定した。労組(CFE CGE)は、従業員半減(1438人を865人に削減)を不服としてストを打つも、12月3日、削減数583人で合意した。(ロッカ・グループは、従業員数639人を擁するコルシカ第1の雇用企業。同島及びPACA州の商品輸送を中心に塵芥処理業や不動産業も営む。売り上げ8100万ユーロ。)
22日:ITER理事会が開催され、当初予算(2007年見積りで50億ユーロ)が建設の遅延に伴い3倍強(2013年には160億ユーロ)に膨張したことを重視し、更なる遅延が計画自体を反故にしかねないと警鐘を鳴らした。
治安関連
11日:トゥーロンで兵士襲撃を企んでいた男(25歳)が「テロ活動に関係する犯罪者集団」に与した容疑で逮捕された(10月29日)。政府は、「高まるテロの脅威」を前にして、「全面的な警戒」の必要を繰り返し強調した。同人の宿泊施設に届いた小包が大きく破れており警察に通報。覆面やトレンチナイフが発見された。取調べで、被疑者は、シリア在の「イスラム国」所属フランス人と連絡を取っており、同人からインターネットを通じて行動に移るよう教唆されたことを認めた。
24日:アッシリア・フランス部隊(AFL)の名の下、10名の仏人元兵士がイラクに赴き、キリスト教民兵組織(Dwekh Nawsha Irak)に合流して「イスラム国」と戦おうとしている。東方のキリスト教徒擁護を唱える有志らで、3名はラングドック・ルシヨン出身者。ペルピニャンやアメリー=レ=バンでも一部の訓練が行われている。AFL加入者は、イラク行き航空券、戦闘服、寝袋、緊急医療品、カラシニコフ、弾丸、食料等調達に最低1500ユーロを負担する。寝所は友軍が提供する。但し、実際にイラクで戦闘に参加しているかは未確認。フランス法は、仏人が傭兵となって報酬を受けることを罰している。当該民兵は、無報酬かつ仏国家を脅かすテロリストではないところから、帰国しても当局に追われることは無い由。
パリ・テロ関連
14-17日:マルセイユでも爆破予告や脅迫が連日発生した。国立病院に給食、洗濯物等を届けに来た業務用トラックにつけた「パリに祈る」や「フランス万歳」の貼紙に怒った覆面4人組が運転手の喉下にナイフを突きつけて脅したり、別トラックに投石や刀を振り回すなどしたりした。地下鉄駅で、「神は偉大なり。地下鉄をぶっ飛ばしてやる」などと叫びながら警報装置を作動させた5人組が拘束された。市中心部の繁華街で警察官に向かって喉元を掻っ捌く仕草を見せながら幾度も「神は偉大なり」と叫んだ男(23歳)は現行犯逮捕の後、禁固1年を宣告された。
17日:マルセイユで、ヴェールを被った女性(18歳)が地下鉄駅から出たところを、「お前たちのせいであんなことになった」と叫ぶ男に襲われ軽傷を負った。
17日:マルセイユのユダヤ人学校教員(58歳)に「イスラム国」のTシャツを着た3人組の男が反ユダヤの言辞を浴びせて殴りかかり、ナイフで腕と脚に切り傷を負わせた。後日イスラム教導者が被害者を見舞い、共に博愛を訴えた。
17日:トゥールーズで開かれた追悼集会に市民1.5万人が参加。
18日:原子力空母シャルル・ドゴールがシリアの「イスラム国」爆撃任務を帯びて護衛艦(フリゲート艦8隻、攻撃型原潜1隻)と共にトゥーロン港から東地中海に向けて出航。
19日:マルセイユ市中における緊張の高まりを受けて、マルセイユ・エスペランス(市長及び同市に存する主要宗教の代表者によって構成される一種の賢人組織)が声明を発表した。トゥールーズでもイスラム地域社会が他宗教代表者の出席を得て平和を唱えた。
19日:管内の主要公共施設では、数日来警戒に当たる兵士や警察官の増強配備がなされた。繁華街やスーパーマーケットでは警備員の需要が増加し、警備会社が応じきれない状態が生じている。トゥールーズでも従来の3割増。但し、警備会社では、警備員養成に数ヶ月を要すること、むやみに増やすとイスラム原理主義者を引き入れる可能性もある故、慎重な対応をしている。一方、繁華街や商業センターでは、客足は2割方減。
20日:テロ事件後、初のイスラム礼拝日にあって、大多数のモスクでは宗教指導者が、テロ行為を弾劾し団結と平和を訴えた。
12月
6、13日:州議会選挙第1回及び第2回投票実施。管内では、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール及びオーヴェルニュ=ローヌ=アルプで右派、ラングドック=ルシヨン=ミディ=ピレネで左派、コルシカで民族主義派が勝利。極右(FN)は政権獲得ならなかったものの全域で躍進した。
25日:シヴェンス(タルヌ県)での灌漑用ダム建設計画が破棄された。(2014年10月、右工事をめぐり建設反対派と憲兵隊とが衝突し、反対派活動家が死亡した経緯あり。)規模を縮小した貯水池建設案については検討中。
治安関連
2日:ベズィエ(エロー県)市長ロベール・メナール(親FN)は、「ベズィエ護衛団」を創設する意向を表明した。政府による緊急事態発令期間中、軍人・警察官・憲兵・消防士経験者から募った志願者に自治体建物の警戒を担当させるもの。知事は、市警察の職掌に関わる事項故、市議会や知事の承認を伴わぬ勝手な変更は認めないと断念を促した。
16日:11月のテロ事件後、フランス各地の司法当局に報告のあったイスラム過激思想関連事件数(カッコ内は管外):マルセイユ35、(ボビニー24)、ニース19、(ヴェルサイユ17)、サン・テチエンヌ16、(ナンテール14)、エクサン・プロヴァンス14、トゥールーズ13、(ボルドー、パリ共に11)。テロがパリ及びその郊外で発生したにもかかわらず、件数でみる限り」反応は南仏の方が激しい。全仏規模では、69%はテロ称賛やテロ教唆、人身に対する危害21%、器物の毀損6%、緊急事態措置違反3%等。犯行の23%を未成年者が占める(一般犯罪では8%)ことから今後深刻な問題になりかねないと憂慮する声も。
17日:モンペリエ在のイスラムに改宗した仏人女性(カロリーヌ、23歳)とその夫(アッバス、仏チャド人、35歳)を治安当局が拘束した。家宅捜査で、妊娠を装い実は爆発物を隠すためと思われるアルミニウムで覆った半球形ポリエステル製の擬似腹や、コンピュータから「子供と自爆する方法」等のネット・サイト跡が発見された。
コルシカ関連
17日:コルシカ議会選挙(13日)で首位当選した民族主義派から領土自治体議長(ジル・シメオニ。領土自治体は同島の政府に相当)及び領土議会議長(ジャン=ギ・タラモニ)が選出された。就任早々、両議長は25名に及ぶ「政治犯」釈放を訴えた。タラモニは終始コルシカ語で演説し、一部の不興をかった。民族主義者による政権は1982年の議会設立以来初。なお、2018年にはコルシカを構成する2県が廃されることになっており、新執行部の任期は2年となる。
24日:コルシカ、アジャクシオ市内で学校荒らしや、覆面をした者たちによる放火が発生。駆けつけた消防士・警察官に石や瓶を投げ、罵りながら鉄の棒やバットで車輌窓を破壊するなどした(消防士2名、警官1名が負傷)。25日、負傷した消防士、警察官への支援を表明しようと県庁前に600人が参集、約半数が事件現場に向かい、中には「アラブは失せろ」、「ここは我々のもの」と叫ぶ者が出た。イスラム礼拝室が荒らされ、コーランや宗教書の一部が焼かれた。コルシカ知事による集会禁止令にもかかわらず、27日も抗議集会が催されたため、公安当局による警戒が続いた。
30日:2015年破壊活動件数 爆破5件、未遂2件で、1976年のコルシカ民族解放戦線(FLNC)設立以来、初めて10件未満となった。内務省によると、テロ的性格を帯びたものはない。殺人も9件(内2件は犯罪組織間の抗争)で2007年以降最低。FLNCが武装闘争を放棄したことによって、公安当局が一般犯罪捜査に力を注げるようになった結果と言われている。